清涼里
朝起きた持ち主は、気分爽快でしたが
エニーはあまり
寝付けなかったそうです。
ホテルの部屋は
オンドルでとても暖かいので
のどが乾きます。
いえ、暖かいというよりも
暑いくらいです。
床暖房の威力はすごいのです。
持ち主たちは、韓国人のお友達ジェニー(仮名)との待ち合わせ前に
朝ご飯にありつこうと、ホテルを出てソウルステーションへと向かいました。
はじめての地下鉄に乗り込みます。持ち主たちのホテルは清涼里という駅のそばです。
ここから、目的地のソウルステーションまでは乗換えなしで行けます。
ただ、ここは外国。放送を聞き損なうと、いまが何駅なのかわからなくなります。
電車の座席はすてきなアルミ製で、なんだか未来的です。
はしゃいでしゃべりすぎて、どこの駅かわからなくなり、あせって確かめるという繰り返しです。
ソウル駅
ソウルステーションに到着すると、朝ご飯が食べられるところを探します。
昨日は、ロッテリアに入ってしまいましたが、
きょうは、なるべく韓国を体験しようと4人は決めていました。
ダンキンドーナツやコーヒーショップがありますが
それらは、なにもなかったときの押さえとし韓国的な店を探します。
4人が目指したのは、地球の歩き方で紹介されている
「ハンファフードコート」という大衆食堂です。
迷いながらようやくたどりついた食堂には、
たくさんのお店が社員食堂の窓口のように開いています。
中央のカウンターでチケットを買い、窓口に取りにいくという形式です。
ただ問題は、メニューに写真がなく、簡単な英語が書いてあるだけということです。
ここで通じる言語は韓国語だけです。
持ち主は、若干わざとらしく
窓口でどんな料理を作っているのか
のぞきこみました。
すると、おじさんは
韓国語で説明しながら
料理を見せてくれます。
そして、自分の店のメニューを
これだよといいながら
指差してくれます。
その時持ち主に、幼い頃の野生の感がよみがえってきました。
持ち主の幼い頃、持ち主家にはよく持ち主父の外国の友人がやってきました。
持ち主は、言葉がまったく通じなくても、ジェスチャーや感で
なんとなく意思疎通していたものです。
ここのところ、インチキとはいえ、英語を話すようになっていた持ち主は、
英語に頼り過ぎ、その野生の感をすっかり忘れていたのです。
だから、言葉が通じないことがちょっと恐怖だったのです。
でも、そういえば、むかしは言葉なんてどうでもよかったはずです。
この食堂でいま、その、言葉なんかわからなくてもどうにかなるという感覚が
よみがえってきたのです。
持ち主は、窓口という窓口を覗き込み、おじさんやおばさんの韓国語の説明を聞きました。
みな、おいしいわよ、これにしなさいと、激しい営業を始めます。
そして持ち主は、ビビンバのようなものを注文することに決定しました。
マイキーは、キムチチゲで、ジェシカは麺類、エニーはのり巻きです。
ここでもまた、みんな自主的に食べたいものを買っています。
持ち主は、3人のバイタリティーにまたまた感動しました。
となりのテーブルのお兄さんが、持ち主と同じものを食べているので、観察してみました。
ものすごくていねいに混ぜています。持ち主も、まねしてよく混ぜます。
まぜるのがおいしくなる基本なのでしょうか?
ちょっと辛いですが、とてもおいしいです。4人は大満足です。
どこでも日本人に出会いましたが、そういえばこの店でも昨日の店でも、
日本人には出会いませんでした。持ち主たちは韓国を満喫中です。
ホンデ
待ち合わせ時間になったので
ジェニーを待ちます。
近くにトイレがあったので、持ち主は
この日4回目のトイレに行きました。
韓国に来て
持ち主のおなかは順調です。
でも、この4回のトイレが
翌日の悲劇へとつながることに
持ち主はまだ気づいていませんでした。
トイレから出ると、ハイテンションのジェニーが待ち受けていました。
背が高くて、エキゾチックな顔立ちの美人ジェニーは、
西欧人の考えるアジアンビューティーそのままといった雰囲気です。
ジェニーにあった瞬間、海外旅行が一気に、友達と遊ぶ気楽な気分になって行きます。
でも、今回の韓国訪問は、ジェニーに会うことが第一目標だったので、それで問題なしです。
ただ、ちょっとおっちょこちょいなジェニーは、足首の靭帯を伸ばしてしまったそうなので
あまり無理はさせられません。
まず、エニーが行きたかったロッテマートソウル駅店でお買い物です。
足がいたいなら座ってれば?という持ち主たちの提案に、ジェニーは、
ダメダメ。おすすめ品があるんだからと、ついてきます。
ジェニーは、オススメの海苔、オススメのお茶、オススメのコチジャンを教えてくれます。
ジェニーはまた、オススメラーメンや韓国の伝統菓子等を
持ち主のカゴに勝手にいれていくので、持ち主の買い物カゴは大変なことになっています。
みんなの荷物を見回すと持ち主のカゴが一番多いです。
そのため、持ち主には、買い物王の称号が与えられてしまいました。
それでもみんなの荷物は大量です。
ジェニーの提案で、ロッテマートのロッカーに、買い物した荷物を預けます。
確かに、あんな量を持って歩くんじゃ、たまったものではありません。
そのあとは
ジェニーにつれられて
地下鉄に乗りました。
4人だけのときは
あんなに気をはって確認していたのに
ジェニーがきた瞬間
もうジェニーの言うがままに
くっついて歩いていきます。
そのため、持ち主はいったい自分がどこに行ったのかわかりません。
ジェニーが連れて行ってくれたのは、学生街のようなところでした。
後から調べてみて、あれはホンデだったのでしょうか?地図を見てもわかりません。
おしゃべりしながらお散歩です。もう、まったく観光ではありません。
お店をみたり、景色をみたというよりも、ただただおしゃべりに集中です。
仕事の話、彼氏の話、話はつきません。4人は、お茶を飲みにカフェにはいりました。
ここでもおしゃべりは止まりません。ほんとに、女の子はおしゃべりが大好きです。
ミョンドン
カフェを出て、4人はミョンドンに向かいます。さぁ、またショッピングの始まりです。
そして、張り切って駅をでたら、そこには、ジェニーの噂の彼氏
フランス人のプリンス(仮名)が待っていたではありませんか。
ラブラブカップルにくっついて
洋服屋さん、下着屋さん、コスメ屋さん。いろんな店をのぞきます。
けれども、ここで意外な事実が浮上しました。
観光客の4人よりも、一番ショッピングにのめり込んだのは、
誰あろう、韓国人のジェニーだったのです。
そして、ミョンドンの街を案内してくれたのは、韓国人のジェニーではなく
フランス人のプリンスだったのでした。
けれども、おしゃべりな女子5人に囲まれ、女子のお店に連れ込まれ、
かわいそうにプリンスはたいそうくたびれたことでしょう。
ミョンドンの買い物でおなかがすいてきた4人は
とうとう初めての屋台を体験することになりました。
持ち主が注目していたのは、屋台の前を通ると、
無口なエニーが異様に反応していた食物です。
アメリカンドッグに、ポテトがささっているような風貌をしています。
エニーと持ち主は、そのあこがれの食べ物に食らいつきました。
それはやはり、アメリカンドッグにポテトがささっているものでした。
しかし、相当新しいです。大興奮です。
インサドン
そのあと、夕飯を食べにいくため
再び地下鉄で移動しました。
ですが、あれはいったい
どこだったのでしょう?
人について歩くと
本当にわかりません。地図で見ると
インサドンだったようです。
道の両脇を
民芸的なお店が占めています。
かわいい小物がたくさんあり、持ち主のお財布の紐がまたまたゆるんでしまいそうです。
とくに、唐辛子のマスコットがついた巾着が気になってしかたありません。でも、我慢しました。
唐辛子はなんだかかわいいです。
とくに綿の入った布でできた唐辛子は、たまらないかわいさです。
たぶん、唐辛子クッションがあったらば、買ってしまったかもしれません。
ここでは珍しく、財布の紐が固めのエニーが吟味に吟味を重ね
チマチョゴリキティちゃんを購入していました。
持ち主は、エニーの堅実さを見て、自分の買い物王ぶりを少々反省したのでした。
マイキーと二人で道をふらふらと歩いていると、
伝統的な机や箪笥が売っているお店がありました。
ちゃぶ台のようなテーブルがとてもかわいいです。
店をのぞきこんでいると、以前マイキーがほしがっていた、
韓国製のお重があるではありませんか。
真剣に覗き込む二人をお店のおばさんが呼び寄せます。
二人はお店に入ってみました。お重の値段は48000ウォン。
おばさんの売り込みは激しく、1000ウォンまけてくれるといいます。
持ち主とマイキーは、おばさんの迫力に圧倒されてしまいそうです。
そこで、ジェニーに助けを求めることにしました。
ジェニーの値切りにより、45000ウォンにしてもらい
マイキーはお重をゲットしたのでした。
お店の中には、他にも興味深いものがいろいろありました。
持ち主は、なみなみカットのちゃぶ台にたいそう惹かれましたが
いったい何に使うのかを考えて、あきらめました。
夕飯は、ジェニーが行きつけのお店に連れていってくれました。
ジェニーいわく、チヂミが世界で一番おいしい店だそうです。
チヂミと、辛いソーメンチャンプルのような炒めもの、
それからすいとんのようなスープ、スジェビを食べました。
量が相当でかなり辛いですが、とてもおいしいです。
オススメのチヂミは、特においしく、あっという間になくなりました。
ソーメンチャンプルは、よくまぜまぜします。ジェシカがまぜまぜ役に任命されました。
この時持ち主は、ビビンというのは混ぜるという意味だということを初めて知りました。
ということは、ビビンバもまぜまぜするべきということですね。
今まではそのまま食べていましたが、これからはよくビビンしようと思います。
ただ、辛いビビン麺を食べた後に熱いスジェビを飲むと、舌が刺激で痛くなります。
ビビン麺は相当辛いのでしょう。
清渓川
夕飯を食べ終えた後、長時間つきあってくれたプリンスとお別れし
5人は夜の清渓川の川べりをお散歩します。
この川は、上にあった高速道路を取り壊して、汚染していた川を復興させ、
ソウル市の気候や環境に大きく変化を起こしたという噂の川です。
持ち主も、テレビの特集で見たことがありました。
その川べりを歩くので、ちょっとわくわくします。
けれども、川べりは、水のそばでとても寒いのです。
若いジェニー、マイキー、ジェシカは元気ですが、
持ち主とエニーは寒くて寒くて仕方ありません。
川べりはロマンティックで、まわりはカップルばかりです。
カップルを見ると、みんなとても薄着です。
ソウルの人々は、寒さ慣れしているのでしょうか?
それともデート中だから、あったかいのでしょうか?
ようやく地上にでて、暖かくなるのかと思いきや、やっぱりソウルの街はとても寒いのです。
持ち主は、あの暑い暑いホテルの部屋が懐かしくなってきました。
再びソウル駅
持ち主たちは、ようやく荷物の置いてあるソウル駅に到着しました。
朝、ソウルマートで大量に買い物してロッカーに預けていた荷物のことを
すっかり忘れていたのです。これを取り上げなくてはならないのです。
荷物を取り上げた後、持ち主たちは、暖かい飲み物を求めてコーヒーショップに入りました。
身体が冷えきっていたので、暖かくて甘いコーヒーがとてもおいしく感じます。
それからまたまた、おしゃべりが始まりました。
韓国にいるというより、
だんだん、立川のドトールで長居してしゃべっているような雰囲気になってきました。
時間が11時になり、お店は閉店の時間です。
持ち主たちは、ジェニーとお別れです。
ジェニーとは、しばらく会えないと思うと寂しいですが、きっとまた会える日もくるでしょう。
4人とジェニーはお別れし、別方向の地下鉄に乗り込みました。
再び清涼里
ジェニーにくっついて歩いていた持ち主は、すっかり平和ぼけしていましたが
地下鉄に乗り込んでから、少々しゃっきりし、無事にホテルのある駅で降りられました。
けれども、最後にまた事件がおこったのです。
なんと、持ち主たちのホテルがある出口がどこかわからないのです。
朝乗る時に、うっかりして、出口番号を覚えておかなかったのです。
地下鉄で降りる時に間違えさえしなければどうにかなると思いきや、なかなかそうはいきません。
疲れて眠いし、頭がまわりません。
おばさんをつかまえて聞いてみても、外国語はわからんよ〜と、逃げられてしまいました。
とりあえず、近場の出口から地上に出てみた4人は、あたりを見回しました。
するとそこは見たことのある風景です。
昨晩ふらついた、ワッフル屋台のある場所だったのです。
4人は、ほっとし、ホテルへと戻りました。
帰り支度
部屋に戻ると、部屋の中は
あの寒かった川べりが
懐かしいほどの暑さです。
窓をあけて
少し空気をいれかえましたが
ちっともすずしくなりません。
でも、持ち主にはまだ、
大量の荷物を
スーツケースに入れるという任務が残されています。
そして、お風呂ジャンケンにも勝たなくてはなりません。
さぁ、勝つぞ、と意気込んでいると、エニーが持ち主にお風呂の順番を譲ってくれました。
なんて優しいのでしょう。
お風呂からでると、エニーはほとんどパッキングを終えていました。
持ち主はそれを見て、それから自分の荷物を見て、ちょっと憂鬱になりました。
持ち主の買い物の量は相当です。それがすべてスーツケースに入るとは思えません。
とくに、海苔です。海苔はくだけないように、プラスチック容器に入っているため
場所をとります。それから、ついつい買ってしまったロッテチョコパイならぬ、
巨大18個入りのチョコ餅の箱、持ち主母と姉に買った足裏スクラブ、
空港で買った大量の化粧品、頼まれて購入したタバコの箱です。
持ち主は、眠いし暑いし疲れているし、本当に嫌になってきました。
それでも、やらねばなりません。とりあえず、すべての荷物を床に並べてみました。
笑っちゃうような量です。まず、がさばる箱を捨てます。
それから、硬いものから順番に入れてみます。けっこう入ります。
入れてみると、なんと、海苔以外はすべて入ってしまいました。
そこへ、エニーがお風呂からでてきました。
どう?入りそう?というエニーの質問に
海苔以外は、はいった〜と、満足気に答えました。
すると、エニーは言いました。海苔も、ばらばらにすれば入るんじゃない?
エニーの言葉を試してみようと持ち主はもう一度、荷物をだし、
スーツケースがでこぼこならないように荷物をつめこみました。
そして、一番上に海苔を乗せてみたところ、
なんと、すべての荷物がスーツケースに入ったのです。
あの、すごい荷物がよく入ったものです。
自慢したくなって、マイキーたちの部屋に電話してみましたが、冷たくあしらわれました。
明日はいよいよ帰国です。