会社近くのお寿司屋さんで手巻き寿司百円の日に、持ち主とお友達はお店に並びます。
なんたって美味しいし、通常値段ではなかなか食べられないからです。
しかしその日、事件は起きたのです。
カウンターに通された持ち主たちに強面の板さんが言ったのです。
毎月来てるでしょ。先月はあの辺に座ってたでしょ。もう、注文するものも決まってるよね。
まずい、バレてる!
持ち主は比較的地味な顔立ちなので、得意技は人に顔を覚えられないことです。
お友達は、ちょっと個性的な服を着ますが、これまた派手な顔立ちではないので、ふたりが面バレすることはないと信じていたのです。
しかし、バレてる!
酒も飲まず、たんたんと寿司を数本食べるだけの持ち主たち。寿司屋としたら、あまりありがたい客ではないでしょう。
でも、持ち主たちのいいところは、さっと食べてさっと出る。滞在時間30分なところです。
そして話している内容は、やっぱりネギトロ最高!とか、至高のトロタク!とか、ああ!美味しい!とか、そんな寿司賛辞ばかりで無駄口はたたきません。
帰りがけ板さんに、ちょっとしか食べなくてすみません。と、持ち主が挨拶すると、板さんはにやりと笑い、
また来月もおいで!
と、言ってくれたんです。
ええ。ええ。行きますとも!