道の向こうの方から
クリーム色のコンパクトカーが
やってきます。
クリーム色とはめずらしいなと
ぼくの持ち主が車に目をやると
おもしろいものが見えました。
なんと
クリーム色の車の後ろにも
クリーム色の車が
走っているではないですか。
持ち主は、2つの車種が同じなのかどうかが
大変気になり、キョロキョロしました。
すると、後ろのクリーム色の車が、右折のためか
前のクリーム色の車の横に並んで止まったではないですか。
同じです!色も形も同じ車です!
持ち主は、この小さな偶然にかなり興奮しました。
ご存知の通り、ぼくの持ち主は
少し抜けているのですが
昨日もこっそり
事件を起こしていました。
持ち主の執務する部屋は4階で
そこに行くためには
いつも階段を利用しています。
その日持ち主は
少し考え事をしながら
階段を上っていました。
4階に到着すると
少し息が切れており
持ち主は運動不足を反省しました。
しかし次の瞬間、持ち主は気づいたのです。
階段から見える景色が、いつもと少し違うような気がするのです。
似ているけれど、少し違和感があるのです。
持ち主は、パラレルワールドにやってきてしまったのでしょうか?
次の瞬間、気付きました。
どうやら、4階を通りすぎ、5階までやってきてしまったようです。
どうりで息が切れるはずです。
持ち主は、少しあたりを見回してから
何事もなかったかのように階段を下りはじめました。
上る人ばかりの中、下りる持ち主は、注目を浴びていましたが
こういうことに慣れている持ち主は、しれっと下りて行ったのでした。
洋服が大好きなぼくの持ち主。
春ものを見ながら
悩んでいます。
欲しいな。でも高いな。
持ち主は
春らしいスカートが
欲しかったのです。
でも、個展があるし
無職の時期もあったので
あまり余裕がありません。
持ち主は、なんだか悲しくなってきました。
でもその時、持ち主は、よいことを思いついたのです。
そうだ。最近はいていないスカートを染めちゃえばいいんだ。
思いたったら、即実行したい持ち主は
さっそく、はかなくなったアイボリーのスカートを、紫色に染めてみました。
説明書通りに、染め粉をお湯で溶かし、高温で染めた後
水ですすぎ、洗剤で洗った後に色止め液に浸けるだけです。
少し色ムラがでましたが、スカートの生地は
織りがあるので、あまり気になりません。
持ち主は大満足です。
お金がなくたって、アイデア次第でけっこう楽しく生きて行けます。
朝、ぼくの持ち主が
駅に向かって走っていると
駅付近がなんだか騒がしいです。
おはようございま〜す。
という、悲壮感あふれる
叫び声が響きます。
なにごとかと見ると
駅の前に、色とりどりの
のぼりを持った
ぽっちゃりしたおじさんたちが
眉間にシワを寄せて
おはようございま〜す。
と、叫んでいるではないですか。
どうやら、市議会議員選挙に向けての活動のようです。
のぼりを見ると、いろいろな政党の名前が並んでいます。
わざわざ候補者多数で集まったのでしょうか?
でも、強ばった表情をした、大量のおじさんたちに
機械的にいってらっしゃいと言われても、ちっともわくわくしません。
選挙活動って、なんだか不毛ですね。
ぼくの持ち主のまわりには
おもしろい人が
たくさんいます。
彫金の先生も
そんなおもしろい人の
ひとりです。
ケータイの調子が悪いので
ソフトバンクショップに
行った先生は、あることを
確信したそうです。
それは、こんなことです。
先生は、それまで空港に行くと、なんだかきゅんきゅんしていたそうです。
それは、きれいな人がたくさんいるからだと思い込んでいましたが
ソフトバンクショップに行って、真実が分かったのだそうです。
先生は、それほどきれいではないお姉さんでも
首にきゅっとスカーフ巻いているのを見たら
きゅんきゅんしてしまったのだそうです。
そうです。先生は、きゅっと巻いたスカーフフェチだったことを
その時に、確信したのです。
ほら、おもしろい人がたくさんです。