ぼくの持ち主は
たいてい同じ時刻の
同じ電車の
ほぼ同じ位置に乗るタイプです。
世の中には、そうした人が
結構いるもので、車輌内には
見知った方が何人かいたりします。
その日、持ち主は
そんな見知った
おじさまの前に立っていました。
ところが
大変なことが起きたのです。
いつも、おじさまが降りる駅に着いたというのに、おじさまが降りないのです。
持ち主は、心配になりました。
今日は、目的地が違うのでしょうか?
いいえ、ちがいます。おじさまは寝ています。
持ち主は、ドキドキし始めました。
おじさまを起こした方がよいだろうか?
でも、それはかなり怪しくないだろうか?
悩んでいるうちに、ドアは閉まり、電車は走り始めました。
少しして、おじさまが目を覚ましました。
そして、次の駅に着くと、少しあわてておりていったのです。
おじさま、起こさなくてごめんね。と、持ち主は心の中で思ったのでした。