ええ。あれは梅雨も明けた木曜日のことでした。
持ち主、やらかしたんです。
なにを?って。
またぼくを暑い家に置いてったんです。
その日は、お友達と外ランチだったので、お弁当を持たずに出た持ち主。
とても通勤バッグが軽かった上に、スカスカしていたそうです。
お弁当って、結構重いんだなと、思ったんだよね。
持ち主は悪びれずに言います。
でも、会社着いてTJ探したらいないじゃん。
TJも重いしかさばるんだな。って、思った。
って、ぼくのことを暑い部屋に置き去りにした上、失礼な人ですね。
ぼくの持ち主は、大人のくせにゲームが大好きです。
だから、ポケモンGOが配信されたとき、すぐにダウンロードしたんです。
ワクワクして始めようとしたんです。
でも、アクセスが集中したせいか、新規アカウントをつくることができず、おあずけとなりました。
翌日もアカウントを作れず、持ち主は、すっかりあきらめモードで会社に行くと、お友達がポケモンGOを始めていました。
そこでもう一度チャレンジして、アカウントを作りました。ようやく始められるぞ!と、ワクワクしていると、今度はGPS信号を感知できないトラブルでおあずけです。
家に帰って、GPS問題を解決し、今度は裏技でピカチュウをゲットしようとしたところ、ピカチュウが出てこずにゲームが進まずおあずけです。
とりあえず始めなよ。というお友達のアドバイスをいただき、ようやく本日の昼休みからポケモン捕獲に乗り出した持ち主。
22時の時点ですでに40匹以上を捕獲しました。
これですよ!こうやってはまるから、神様が持ち主にポケモンGOをやらせなかったんだとぼくは思います。
持ち主が中央線に乗っていると、背の高いお父さんらしき人と、3歳くらいの男の子が乗り込んできました。二人は異国の人で、英語ではない言葉で話していました。
その会話の中で、持ち主は聴きなれた単語をキャッチしたのです。
セイブコクブンジセン、セイブタマコセン、コクブンジ、アズサ
アズサは、特急あずさのことでしょう。
セイブコクブンジセン、セイブタマコセンは国分寺で乗り換えられる西武線です。
中央線に乗りながら西武線の話をしているなんて、マニアックだな。
と、思っていると、小さな息子の方がかなり熱く、セイブコクブンジセン!と、連呼しています。
もしかしてこの小さな坊ちゃん、電車大好き乗り鉄なんじゃないでしょうか?
国分寺で仲良く降りた親子。
ああ。ふたりがこの後セイブコクブンジセン乗ったかどうかは謎です。
アボガドに混ぜるだけでできるワカモレの素が残っていたので、それを見ながら持ち主は何度か考えていました。
これを、豆腐に混ぜたら、どうなるんだろう。
淡白だけどコクのある豆腐は、アボガドの代用になるような気がするんです。
意外と美味しいんじゃないかと思うんです。
やってみたくて仕方ないのです。
ただ、予想に反してものすごくまずいものができてしまう可能性もあるので、思い切れなかったんです。
でもある日、やってみたいという衝動と好奇心を抑えることができず、持ち主はついにワカモレ豆腐にチャレンジしました!
まず、絹豆腐をペースト状にし、そこにワカモレの素とレモンをちょっ足してよく混ぜます。
味がこなれるようにしばらくおきます。
食べます。
これが!美味しかったのです。
豆腐っぽさはほとんどなくなり、メキシカンが際立ったペーストになりました。
持ち主はそのまま食べましたが、なにかにつけてたべてもよさそうです。
その日は、久しぶりに会うお友達と、ホテルの中華アフタヌーンティーでちょっと贅沢をすることになっていました。
チャイニーズティと飲茶類が10種類ほどついたコース。お味は決して悪くありませんでした。
ただ、サービスがなんだかいまひとつなのに、お高いお値段にふたりとも少々納得がいかなかたようです。
そんななか、ふたりは夕飯の相談を始めました。
夕飯、どうしようか。
う〜ん。なんかイマイチだったよね、今日。せっかくの中華が。
そうだね。やっぱりアフタヌーンとかダメだねぇ。洒落てるだけで。
じゃぁさ、仕切り直しで中華、行く?
と、いうわけで、中華の後に中華に行きました。
後半の中華には、ふたりとも大満足でした。
お友達とお買い物を楽しみ、気持ち良く帰宅したぼくの持ち主。
換気しようと窓を開けた瞬間、ギャーッて叫んで窓を閉めました。
なぜってそこには、超巨大なあいつがいたんです!
そうです。持ち主の大嫌いなGです。
網戸と窓ガラスに挟まれたあいつは、困ったように触覚を動かしています。体長は約3センチ。大きいです。
煌々とした光の中、上下左右にせわしなく動く大嫌いなあいつを、持ち主は見せつけられています。
でも、このままだとあいつはずっとあそこにいるのでしょうか?それとも隙間から逃げるのでしょうか?
とりあえず持ち主は、朝になったらまた考えようとカーテンを引きました。
翌朝、恐る恐るカーテンを開けて窓に近寄ると、なんとあいつはいませんでした。どうやら、網戸のちいさな隙間から逃げ出したようです。
持ち主はホッとしましたが、次の瞬間思いました。
あんな隙間から入ったり出たりできるんだから、部屋の中には簡単に入れるんだ。
そして、背筋がぞ〜っとしました。
こうして持ち主は、薬局に出かけてあいつホイホイを購入したのでした。