ぼくの持ち主が
真剣な顔で
仕事をしていると
仲良しのお姉さんが
今日お休みの若者の
休み理由を言いに来ました。
あのね。水泳だって。
え？水泳？
持ち主が聞くと
お姉さんはキョトンとした顔をしました。
そして、もういちど言いました。
通院。
それから、つぶやきました。
水泳、通院。水泳。通院。
どこも韻を踏んでないけど。
お姉さん。聞き間違いって、そんなものです。

朝ご飯を作りながら
テレビの音を聞いていると
ぼくの持ち主の耳に
入ってきました。
グンマー
数年前から
ネット上では、群馬県が
未開の地グンマーとして
いじられているので
そのＣＭかと思っていました。
でも、群馬のＣＭってなんだろう？
興味を持った持ち主が
テレビに向き合うと
そこには丸い物体が。
そうです。
それは未開の地グンマーのＣＭではなく
お掃除ロボット
ルンバのＣＭだったのでした。
持ち主、どんだけ群馬好きなのでしょう。

朝、駅への道を歩いていると
向こうから
黒いマスクをかぶった人が
やってくるのを見ました。
ダースベーダー？
とっさにそう思うほどの
真っ黒さです。
しかし
よく見るとそれは女の人でした。
黒い上下の服に
長い黒い手袋。
そして、マスクと思った部分は
日焼防止のための巨大ツバがついた、サンバイザーを装着していました。
びっくりしましたが、確かにダースベイダーが歩いているはずはありませんよね。

ぼくの持ち主の
隣の席のお兄さんが
言いました。
ラーメンマンです。
持ち主は、びっくりして
聞き直しました。
いま、ラーメンマンです。
って、言ったんですか？
ラーメンマンです。
お兄さんは紙をピラピラさせて言います。
ラーメンマン？
もう一度、持ち主が聞くと
お兄さんは答えました。
これはメモです。
どうして、これはメモです。が、ラーメンマンです。
に聞こえたのかは、まったくわかりません。

朝、着替えながら
天気予報を聞いていた
ぼくの持ち主の耳に
入ってきました。
今日は一日
水着で過ごせそうです。
水着で過ごす？
それは、いくらなんでも
ないでしょう。
でも持ち主は、天気予報のお姉さんが
水着で天気予報をしているところをうっかり想像してしまいました。
ちなみに、お姉さんが言ったのは、水着ではなく薄着でした。

雑誌を読んでいたら
目に飛び込んできました。
ネコサンバ
とっさに
猫たちが二足歩行で
サンバを踊る姿を想像して
楽しくなってしまいました。
見ていたのは
ファッション雑誌だったので
ネコサンバであるはずがないことは
すぐに分かったのですが
その瞬間を、楽しんだのです。

それは
大雪が降った日のことでした。
早く帰った方がいいかもね。
と、話していた持ち主に
斜め前にいた営業さんが
言いました。
でも、四時半には止むでしょ？
え？四時半に止むの？
持ち主が尋ねると
営業さんが、目を丸くして、えっ？と、言いました。
そして、少し考えてから言いました。
五時半まではやるでしょ？って言ったんだよ。
滑舌悪くて、ごめんね。
お兄さんの滑舌が悪いのか、それとも、持ち主の耳が悪いのか
ぼくには判断できません。

ぼくの持ち主は
お昼にお友達と
美味しい
フィッシュ&チップスの
お店の話をしていました。
すると、お友達が言ったのです。
その店
邪悪チキンも美味しいんですよ。
邪悪チキン！
持ち主の頭の中に
どす黒いチキンが
浮かんできました。
邪悪チキンの正体が、ジャークチキンだとはわかったのですが
どうしても、邪悪という単語とイメージが消えないのでした。

ぼくの持ち主
最近お疲れなのか
なかなかおもしろいことを
思いつきません。
そんな持ち主に
前の席の営業さんが
ちょっとこれに
入金伝票って書いて
と、言いました。
え？入金伝票？
持ち主が聞くと、営業さんはきょとんとしていいました。
グリコ乳業
持ち主の聞き違い、久々です。
これは、疲れがたまりすぎなのか、それとも心に余裕ができたのか？
どちらにしろ、持ち主は楽しかったのでよいです。

耳をかこうと
耳掻きを持ったら
いつもとは
なんだか違う感触でした。
当たりが柔らかいような
気がしたのです。
けれども、気にせず
そのまま耳に入れて
びっくりしました。
なんとそれは
耳掻きではなく
かぎ針だったのです。
うっかりして、耳掻き入れに入れたみたいです。
でも、びっくりしました。