去年のことですが

ぼくの持ち主の

小さなベランダガーデンでは

アブラムシが大発生しました。

木の枝は、黒ごまみたいな

アブラムシで真っ黒でした。

持ち主がアブラムシに悩んでいると

お友達いいことを教えてくれました。

「アブラムシにはてんとう虫じゃない？」

そういえば、理科の教科書にも書いてあったと持ち主は言い、

ぼくらはてんとう虫をさがしに出かけたのでした。

けれども、てんとう虫はみつからかったのです。

ところが、きょうのことです。なんとベランダガーデンにてんとう虫がやってきたのです。

まだ小さいですが、確かにてんとう虫です。

「早く大きくなってアブラムシをがつがつ食べておくれ」

持ち主はいいました。

でも、ぼくは少し心配です。今年はてんとう虫が大発生したりして・・・

ぼくの持ち主の友だちの中に、とってもステキな人がいるんです。
かわいいんです。あこがれてるんです。

それに彼女は、ぼくのことを
「男らしくてステキ☆」
って、言ってくれたんです。

それどころか、
「彼女になってあげてもいいよ。」
とまで、言ってくれたんです。

ところが、そんな時にふと持ち主が・・・
「あのね、しろくまって雑食なんだって。
特にしろくまのオスはおばかさんだから、しろくまのあかちゃんも食べちゃうんだって」

すると、彼女が言ったのです。
「ＴＪ、ちょっと軽蔑するわ」

ぼくはそこまでひどい雑食ではありません。どうぞ、どうぞ、信じて下さい。

☆ＴＪメモ☆

ホッキョクグマ・・・「野生下では主にアザラシなどを食べるが、雑食獣であり、植物性のスゲや昆布なども食べる。」（引用　ウィキペディア）

ぼくの持ち主の特技といえば、そこら中に知り合いを作ることです。
最近もまたひとり、会社の中で知り合いのお姉さんがふえました。
じつはそのお姉さん、生年月日で運命を見れるというのです。
占い好きな持ち主は、さっそく運命を見てもらったそうです。

占いによると、持ち主は人付き合いがよく、それなりの努力すれば望むものは手に入り
仕事でもそれなりの結果を残せるそうです。
ただ、結婚には向かず、愛に生きる激しい人生らしいのです。

日々、結婚はしたくない、と、公言している持ち主ですが
結婚に向かないと言われると、それはそれでちょっとショックだったみたいです。

「恋愛狩人として生きていくわ」
と、ぼくに言いながらも、その肩はがっくりと落ちていたのでした。

持ち主が風邪をひいて、そろそろ１０日が過ぎようとしています。
咳がなかなか止まりません。鼻水も止まりません。ちょっとかわいそうです。
ふと気がつくと、会社でも休んでいる人が増えてます。

風邪が流行っているんですね。

でも、よく見ると、休んでる人ってみんな持ち主の席の近くの人なんです。
耳を澄ますと、あっちやこっちから、コンコン、ごほごほ、ずるずる聞こえてきます。
まさか、ウィルスをまき散らしているのはうちの持ち主？？
あ、なんだかぼくも気分が・・・

持ち主がぼくの写真をじっと見て言いました。

「TJって、どれも同じ顔だね」

当たり前です。ぼくはぬいぐるみなのです。

「右がわばっかりだ」

あ、そういうことですか。

「こんどは左からを撮ってみよう！」

えっ！それだけはやめてください。

じつは、秘密なんですけど、ぼくの左がわってとても獣っぽいんです。
自分で見ても、ぬいぐるみとは思えない獣っぷりなんです。
かわいくないんです。ぼくは、かわいいことが取り柄なのに・・・
だから、ストレスと戦うみなさまを癒すことを使命とするぼくとしては左がわはいかんのです。

今朝、６時半のことでした。
空の向こうから黒い影が飛んできて、器用にベランダのふちにとまりました。
そうです、からすさんがやってきたのです。
隠していたさつまあげをとりにきたのでしょうか。

からすさんは、くちばしでつんつんとお宝があるはずの花かごの土をつつきました。
でも、何もでてきません。あせってつんつん。まだ何もでてきません。

その時、持ち主がカーテンをあけ、驚いたからすさんは飛び去って行きました。

もちろん持ち主は、
からすさんが隠していたさつまあげをすでに処分していました。

でもね、からすさん、あなたがさつまあげを隠したのは、
その花かごではありませんでしたよ。

からすって、かしこいんですよね？

ぼくって何者なんですか？

さっき持ち主に尋ねたところ、びっくりな答えが返ってきました。

持ち主によると
ぼくは、米国の有名メーカーTy社のBeanie Babiesというシリーズの
ぬいぐるみなんだそうです。

な、なんと、ぼくはブランドしろくまだったのです。

このシリーズで人気のあるものにはプレミアもつくそうです。
なんということでしょうか。ぼくもプレミアがついて売られてしまうのでしょうか。
ぼくはブランド品であるが故に悩んでいました。

すると、持ち主が言ったのです。

「大丈夫。ＴＪは汚いし、大量に売ってたから、プレミアなんてつかないよ。」

ぼくはなんだか傷つきました。大量生産で汚いぼく。
世界中に、たくさんのもうちょっときれいなぼくがいるんですね。
でも、ぼくが汚いのは、ぼくだけの責任ではありません。

朝、ベランダでぼくの持ち主がぶつぶつ言っています。

持ち主は、小さなベランダで小さなガーデニングをしていて
季節のお花と、薬味用のしそなんかを育てています。

こんどは、さつまあげか

ベランダにさつまあげ？
ちょっと前に起こったある事件が、ぼくの頭の中によみがえってきました。

ある日、ベランダの花かごの中に、直径３センチくらいの白い脂の塊みたいなものが入っていたのです。

なにこれ？

ぼくらは勇気をだして気持ちの悪いその塊をよく見てみました。
なんとそれは、グリーンピースのとれたシュウマイだったのです。

でも、なぜ、こんなところにシュウマイが？

その謎が解けたのは翌日です。
一羽のからすがソーセージをくわえてやってきたのです。
そして、シュウマイがあったところをきょろきょろさがすと
困ったように首をかしげ、丹念にソーセージを花かごに埋めていったのでした。

最近来てないと思ったら、また始めたんですね、からすさん。

さつまあげは、シュウマイがあったところと同じところに
半分くらい顔をだして上手に埋まっていました。

でも、からすさん。こんな暖かい日だと、食品は腐りますよ。胃腸に注意してください。

ぼくの名前は、てりうす・じゅりあん、略してTJです。

むかしから悩んでいることですが、ぼくの名前って
ＴＪという語呂の良さに合わせて、ぼくの持ち主が適当につけた名前なんじゃないでしょうか。

そのことが、ぼくにとって小さな不満だったのです。

でも、ある日のことです。
持ち主のとなりの席のおにいさんが
ぼくをじっとみて「てるよし」と、いったのです。

ぼくは

「てるよしではありません、てりうすです。てりうす・じゅりあんです」

と、言いましたが、

「てるよし、じなん？」

と、おにいさんはいいました。そして

「てりうす・じゅりあんって、ずっと言ってると、てるよし、じなんになるよ」

と、まじめな顔でいいました。

てりうすじゅりあんてりうすじゅりあんてるおすじゅいあんてるよしじなん

言ってみましたが、ちょっとむりがあると思います。

いい加減につけられた名前という点で不満は残りますが
てるよしよりは、いい名前だと思いました。

ちなみに、ぼくは次男ではありません。長男です。

ぼくの持ち主が風邪をひきました。
ここのところ、ずっと元気にやっていたのでしたが
仕事がひとくぎりついたところにバタっときたようです。

それがおもしろいもので、午前中まで元気に働いてたのに
１１時ころに仕事が落ち着いてきたら、いきなり鼻声になったのでした。
まさに、気が緩んだんだとぼくは思います。

それから、とんとん拍子に
持ち主の調子は悪化していったのでした。

まず、悪寒、次ぎに熱、その次にくしゃみ、はなみず、はなずまりです。

そして、病気になると人は弱気になるものなんですね。

おなかがいたいだの、鼻水がたれるだの、熱いだの寒いだのと
めそめそしていて、正直いって鬱陶しいです。

シャキっとしてください。病は気からです。