ぼくの持ち主は今、ホッと胸をなでおろしています。
胸に手をあて、天を仰ぎ、ありがとう。と、つぶやいています。
一体なにがあったんでしょう。
その日、持ち主はとても疲れていました。
仕事の内容が頭を使って、注意を要する作業だったからです。時間的な制約もあり、結構な神経を使っていたんだと思います。
定時を過ぎつつもなんとか仕事を終えた持ち主は、新しいiPhoneを受け取りに出かけたのです。
本当は違う日にしようと思ったのですが、連日予定が埋まっていたのでちょっと無理したのです。
手続きを終え新しいiPhoneを手にした持ち主は、それでもウキウキしていました。
家に帰る前に、ふと持ち主は思いました。
結構時間も遅いし、データ移行もやらなきゃだから、なにか簡単に食べられるものを買って行こう。
そして食料を買い、バスで家まで戻ったのです。
家に着くと早速ご飯を食べ、データ移行の注意点を熟読し、古いiPhoneのデータを削除したり、整備したりしてバックアップを取り終えました。
ここまでで、帰宅から2時間近く経っています。
そして持ち主は、新しいiPhoneを出して、データを移行しようとしたのです。
ところが新しいiPhoneがないのです。
床の上にも、戸棚の上にも、玄関にも、お風呂場にも、トイレにも、洗濯機にも、どこにもないのです。
どうやら持ち主は、どこかへiPhoneを置いてきたようなんです。
パニクる持ち主。
まず、バスに忘れ物を確認しましたが、ありませんでした。
置いてきてからすでに2時間も経っています。
iPhoneにはロックもかかっておらず、悪い人の手に渡ったらひとたまりもありません。
焦る持ち主は、つぎに買い物をしたスーパーに電話しました。
電話がなかなかつながりません。
何回もチャレンジし、ようやくスーパーに電話がつながりました。ありがたいことに、親切なお姉さんがiPhoneを探して電話してくれるといいます。
待つこと数分。生きた心地がしません。
そうして電話がかかってきました。
持ち主の口からは心臓がでそうです。
お姉さんが語ります。
お探しになられている携帯電話は、箱に入ったものでよろしいでしょうか?
そうです!それです!
そうなんです。持ち主はiPhoneを箱にいれたまま、それが入った紙袋をスーパーのサック台に置いていったのです。
疲れてたんです。はい。
でも、あってよかったです。本当によかったです。
お姉さんありがとう。お店の人ありがとう。親切にしてくれた方、ありがとう。