ぼくの持ち主がお勤めする会社は
もうすぐお引っ越しです。
持ち主も
お引っ越しの準備に大忙しです。
しかし、古い資料や書類
雑誌は捨てられますが
捨てられないものもあります。
ぬいぐるみなどはそのひとつです。
持ち主の席には
ぼくとは別に
シロクマのぬいぐるみがいました。
ぼくのような写実的ではないタイプのぬいぐるみです。
しかし、かわいそうなことに、そのシロクマくんは
あんまり持ち主に愛されていませんでした。
ほとんど、忘れられているともいってよい存在だったのです。
でも、だからと言って、シロクマくんを捨てることはできません。
そこで持ち主は、新しい貰い手を探すべく
シロクマくんを目立つところに置くことにしました。
すると、意外な人物が彼に興味を示したのです。
それは、毎日郵便物を届けてくれるおじさんでした。
おじさんは、郵便物を持ってくるたびに、シロクマくんの頭をちょんとさわります。
これが、愛でなくてなんでしょう?
もう、シロクマくんが幸せになれるのは、おじさんのところしかありません。
そこで持ち主は、シロクマくんの頭に、ポストイットをはり
おじさん行き 養子にしてください。と書いて置いておきました。
その後、郵便物を届けついでにそれを見たおじさんは
笑いながら、シロクマくんを養子にしてくれたのでした。
これで、シロクマくんの将来が安泰だと思うとぼくも安心です。