それは、駅のホームでのことでした。
おじいさんが
ちょこちょこと歩いています。
その歩きかたは驚くほどの小股で
一歩につき
5センチほどしか進みません。
ぼくと持ち主が心配したのは
おじいさんは
そんなに小股でゆっくり歩いていて
いったい電車に乗り込むことができるのか?
と、いうことでした。
電車がホームにはいってきました。ぼくたちはおじいさんに視線を集中させます。
ドアが開きます。みんな乗り込みます。
おじいさんも、ちょこちょこ歩きでドアに近付いていきます。
ああ、そんなにゆっくりじゃ、ドアが閉まっちゃうよ!
と、思ったその瞬間、ぼくたちは見てしまったのです。
おじいさんがふつうの歩幅で電車に乗り込むところを。
おじいさん、ふつうの歩きかたもできたのですね。