しろくまシール


ぼくの持ち主が会社に到着すると、机の上になにかの残骸がありました。
なにかと思ったら、しろくまの残骸です。
いや、正しくはしろくまのシールの残骸です。

しろくまシールの残骸!一体なにがあったのでしょう。

実は先週末、会社のパソコンが新しくなったのです。
土曜のうちに新しいパソコンがセットアップされ、古いパソコンは撤去されていました。

で、このシールは古いパソコンに持ち主が貼っておいたものだったのです。
セットアップした人が、わざわざ剥がして捨てないでおいてくれたんですね。

ありがとうございます。
しろくまとしてもお礼を言います。

やさしさ


ぼくの持ち主、最近咳がひどいんです。
風邪をひいたせいもあるんですが、時々発作のように咳が止まらずゼーゼーしています。

そんな持ち主に、お友達が飴をくれました。
な、なんとマヌカハニーののど飴です。

マヌカハニーといえば、のどにいいお高いはちみつです。
こののど飴はとっても高いでしょう。

いいの?こんな高級品?

持ち主が聞くとお友達は天を見ながら言いました。

いいんだよ。安売りしていたから。

すると、持ち主の隣の席のお兄さんが、持ち主のもらったマヌカハニーのど飴をつかんで言いました。

あれっ。賞味期限が来月じゃん!

まぁまぁ。だから安かったんだよ。

お友達は天を見ながら言いました。

賞味期限?そんなものはいいんです。
そのやさしさがありがたいんです。

ぼく、帰る


みなさま、ご無沙汰しておりました。
ぼく、帰ってきました。

今までなにをやっていたって?
ええ。ええ。ぼくはぼくの本来業務に従事していたんです。

ぼくの本来業務。
それはぼくの持ち主を癒すことです。

ちょっとくたびれた持ち主
ちょっと怒れる持ち主
ちょっと悲しむ持ち主を

癒すことがぼくの仕事なのです。

持ち主、元気がなかったんです。
だからぼくは、ちょっと忙しかったんです。

でも、持ち主は元気になってきたんです。
これもぼくのおかげです。

ぼくが日記を休む時、それはぼくが持ち主を癒している時です。
決してサボってるんじゃありません。

癒し


ぼくの持ち主の個展が始まって、そろそろ10日が過ぎます。

疲れがたまってぼんやりしていた持ち主は、その日電車で座っていました。
すると持ち主の隣に、赤ちゃんを抱いたお母さんが座ってきたのです。

持ち主は子供が嫌いではありませんが、隣の席にやってきた子供にちょっかいを出すほど好きでもありません。
しかし次の瞬間、隣の赤子が持ち主の腕をそーっと触ってきたのです。
持ち主は赤子を見ます。お母さんは慌てます。
すると赤子は、持ち主を見て微笑み、持ち主の人差指を握ってきたのではありませんか!

ああ!これはもう癒し以外のなにものでもありません。
その後、赤子は数度持ち主の指を握りしめ、その度微笑むという行為を繰り返し、持ち主を癒したのでした。

猫も辛い時は寄ってきてくれますが、赤子も持ち主の辛さをわかってくれたのかもしれません。

バランスボール


会社に変わったお兄さんがいるんです。
その人はなんと、椅子の代わりにバランスボールに座って仕事しているんです。

ぼくの持ち主もバランスボール体験がしたくて、ちょっと座らせてもらいました。
結構座りにくいです。

しかしお兄さんがバランスボールに座って、真面目に仕事するさまは、なかなかシュールです。
ほんと、変わった人だと思います。

え?ぬいぐるみと生活する人も変わってるって?
確かにそれは、そうかもしれません。

弟?


昨日、歩いてたら見つけたんだけど。

お友達がそう言いながら、かばんからおもむろにそれを出したんです。
クマです。しろくまです。

似てるでしょ?

ぼくと並べて言うんです。

ええええ〜似てますか?ぼくのがかわいくないですか?
でもね、お友達が言ったんです。

こんなのいたら、素通りできなくってさ。

やっぱり、ぼくのことが好きなんですね。これは!

あわてんぼう


朝、メールチェックをしていると、な、なんとgoogleアカウントにアタックの痕跡が。
焦った持ち主は、アカウントのパスワードを四苦八苦しながら変更しました。

なんとかパスワードを変更し、ふと時間を見ると会社に行く時間です。
あああ!と、叫びながら、小走りに家を出ます。
マンション入り口の階段を駆け下りた時、お財布がないのに気づいた持ち主。
こいつは大変だと、再び階段を駆け上がります。

小走りで部屋に戻ったはずが、部屋番号を見ると、な、なんと階を間違えているではありませんか!
再び小走りで部屋にたどり着き、お財布を確保しました。

ああ。あわてんぼうの持ち主。まさに、急がば回れ。の日だったのでした。

切り身


ぼくが持ち主の机の上でぼんやりしていると、すばやい誰かに連れ去られました。
誰かと思ったら、ぼくを狙うマタギの娘です!

マタギの娘は、笑いをこらえながら、ぼくの口になにかを懸命に詰め込みます。
そして詰め終わると、ぼくを持ち主に返したのでした。

持ち主が保護したぼくを確認すると、なんと鮭の切り身をくわえさせられていたのでした。
マタギの娘の渾身の作らしいです。

マタギの娘!ありがとうございます。

新たなる戦い


ええ。出たんですよ。とうとう。
なにがって?
あれですよ。あれ。カサカサ動く黒いあいつです。

まぁ、引っ越した時に覚悟していたんです。
古い部屋だし隙間は多い。飲食店がないのが救いなだけです。

数週間前、小さいあいつらしき虫が出たので、これはまずいと、毒餌とホイホイを仕掛けていたんです。
引っ越してすぐの時は、冬に向かっていたんで、まったくひっからなかったんです。あいつ。
ところが今朝、な、なんとホイホイにあいつが・・・

ひや〜っと、持ち主は叫びましたね。

仕方ないです。戦うしかないです。
持ち主、負けません。

ニタニタ


ぼくの持ち主は、自覚はないのですが、いつも楽しそうと言われます。
だから笑ってる顔なんだろうな。と、思っています。

けれどもその日、以前のボスだったおじ様におはようございまーす。と、挨拶したら言われたんです。

なんやいいことあったんか。ニタニタして。

ニタニタ!

ニコニコでもなく、ニヤニヤでもなく、ニタニタ!

なんかちょっと下品な笑い方だったんでしょうかね。持ち主。
ちなみに、いいことはありませんでした。特に。