土曜日の記憶


金曜の夕方、エレベーターで一緒になったお友達が言ったんです。

週末はあっという間にすぎるけど、特に土曜日の記憶がない。

確かに。
持ち主も、土曜日は寝坊しすぎてしまうか、昼寝しすぎてしまうかで、なにをしたかっていう記憶がないことが多いです。
お友達とは、土曜日を充実させようと言って別れました。

さて月曜日。やっぱりこの土曜日も持ち主は昼寝をしてしまい、家事以外なにかをした記憶がないようです。まったく充実していない土曜日です。

ただ、土曜日寝坊も昼寝もしないと、日曜に寝坊か昼寝です。そして、日曜に寝ないと、月曜にぐったりしています。
だから土曜日の記憶がないことは、仕方がないことなのかもしれません

しろくま商法


残業が終わり、家に帰ろうとした持ち主のもとに、お友達から写真つきのメールが送られてきました。
なんと、しろくまのついたうどんが、会社の近くで売っているというのです!

もう家路についていた持ち主はくるっと振り返り、うどん目指して今来た道を戻っていきました。

お店に着くと、しろくまうどんを探す持ち主。
見つけ出すとにやりと笑い、迷うことなくレジへと直行しました。

ああ!危険です。これはたぶん、しろくま商法です。
しろくまが関係しているとついつい買ってしまう持ち主に向けた、悪徳商法にちがいありません。

そして、もしかしたら仲良しのお友達に、秘密結社しろくまから、マージンが入ってるかもしれません。

春が来る


持ち主がこれまで住んでいたのは東京の郊外で緑もそこそこ多かったんです。でも持ち主は、季節の移り変わりにそれほど興味がなかったんです。特に芽吹きの春は、アレルギー体質の持ち主が大嫌いな季節です。

いま住む場所は都心部の割に緑が多いです。歩き回ることが多いせいか、季節の移り変わりを肌で感じます。
引っ越してきた時は木々が紅葉を始め、とても美しかったことを覚えています。その後大量の落ち葉によって、裸となった木々は冬らしく寒々しく、枝々の間から見える太陽もなんだか白っぽかったのです。

歩きながら持ち主は、春になってこの枝が緑でいっぱいになったら、さぞ綺麗だろうな。と、めずらしく春を思いました。

石畳の間から緑の雑草が芽を出し始めました。そしてたくさんの木々に新しい芽がつき始めました。それまで茶色かった枝々に赤い芽がついたのです。色です。色が出てきたのです。

ああ、春が来るのですね。

持ち主がアホだった話


ぼくの持ち主は今、ホッと胸をなでおろしています。
胸に手をあて、天を仰ぎ、ありがとう。と、つぶやいています。
一体なにがあったんでしょう。

その日、持ち主はとても疲れていました。
仕事の内容が頭を使って、注意を要する作業だったからです。時間的な制約もあり、結構な神経を使っていたんだと思います。

定時を過ぎつつもなんとか仕事を終えた持ち主は、新しいiPhoneを受け取りに出かけたのです。
本当は違う日にしようと思ったのですが、連日予定が埋まっていたのでちょっと無理したのです。

手続きを終え新しいiPhoneを手にした持ち主は、それでもウキウキしていました。
家に帰る前に、ふと持ち主は思いました。

結構時間も遅いし、データ移行もやらなきゃだから、なにか簡単に食べられるものを買って行こう。

そして食料を買い、バスで家まで戻ったのです。
家に着くと早速ご飯を食べ、データ移行の注意点を熟読し、古いiPhoneのデータを削除したり、整備したりしてバックアップを取り終えました。

ここまでで、帰宅から2時間近く経っています。
そして持ち主は、新しいiPhoneを出して、データを移行しようとしたのです。

ところが新しいiPhoneがないのです。
床の上にも、戸棚の上にも、玄関にも、お風呂場にも、トイレにも、洗濯機にも、どこにもないのです。

どうやら持ち主は、どこかへiPhoneを置いてきたようなんです。
パニクる持ち主。

まず、バスに忘れ物を確認しましたが、ありませんでした。

置いてきてからすでに2時間も経っています。
iPhoneにはロックもかかっておらず、悪い人の手に渡ったらひとたまりもありません。

焦る持ち主は、つぎに買い物をしたスーパーに電話しました。
電話がなかなかつながりません。

何回もチャレンジし、ようやくスーパーに電話がつながりました。ありがたいことに、親切なお姉さんがiPhoneを探して電話してくれるといいます。
待つこと数分。生きた心地がしません。

そうして電話がかかってきました。
持ち主の口からは心臓がでそうです。
お姉さんが語ります。

お探しになられている携帯電話は、箱に入ったものでよろしいでしょうか?

そうです!それです!

そうなんです。持ち主はiPhoneを箱にいれたまま、それが入った紙袋をスーパーのサック台に置いていったのです。

疲れてたんです。はい。
でも、あってよかったです。本当によかったです。

お姉さんありがとう。お店の人ありがとう。親切にしてくれた方、ありがとう。


ぼくの持ち主がその日見た夢は、ここ最近の中では相当なものでした。

持ち主が、全速力で走る持ち主父を追いかけていくと、持ち主父はある民家の前で立ち止まり、玄関に張り付いて、すみません!と、叫び出したのです。
持ち主がなすすべなく立ち尽くしていると、民家の横の電信柱が目に入りました。
なんとそこには、巨大な亀が2匹登っていたのです。
大きさは甲羅の直径が1メートルほどで、全体では1メートル60センチくらいあります。それが縦に2匹並んで登っているのです。

でかい!

叫んだところで目が覚めたらしいです。

亀って、吉夢なんだって。それも、大きければ大きいほどいいらしいよ。

持ち主は大興奮ですけど、なんでそんなへんてこな夢を脳内でつくってるんですかね。アホなんですかね。

ねこに好かれる


土曜日ぼくの持ち主は、お友達の家にやってきた猫に会いに行ってきました。

もともと犬派だったお友達でしが、お友達夫の意向で猫を飼い始めたのです。
しかし(思った通りですが)お友達はすっかり猫に洗脳されていてデレデレしていました。

猫大好きな持ち主は、あまりしつこくしたら猫に嫌われると思い、ベタベタすることを我慢して、すごくさりげなく挨拶したところ、この猫はスタスタやってきて、持ち主をクンクン嗅ぎ、そして撫でても抱いても嫌がることなく、されるがままだったのです。

こ、これは!犬好きなお友達が洗脳されるのがわかります。人懐っこい猫です。その上、持ち主の膝で寝てくれました。
なんて、サービス精神旺盛な猫でしょう!

こうやって猫の奴隷は増えていくのです。
ちなみにぼくは右腕をかじられました。ぼくは騙されませんよ!

仮説


春が近づいてきました。
毎年この時期に持ち主がつぶやくのは、

着るものがない!去年、何着てたっけ?

どうして何十回も春を迎えているのに、毎年同じことを言うのでしょう。
そんな持ち主の難問を解決するため、ぼくは仮説を立てました。

1本当に記憶がない。
2ある服で適当に済ませているが、時期が短いのでなんとかなる。

ぼく、2だと思います。
結論。毎年どうにかしてるから、きっと今年も大丈夫でしょう。

花粉の季節


花粉の季節がやってきました。
ぼくの持ち主は、鼻がムズムズするので多分花粉症です。本人は認めませんが。
外に出ると、鼻の片方がすごく痛くなってきて、その後ムズムズってするらしいです。

たぶん、花粉が鼻の中に入ってるんだと思う。それで許容量を超えるとくしゃみになるんじゃなかろうか。

持ち主は真剣な顔で言いマスクを装着します。

もう、十分花粉症と認識してるみたいですが、本人はまったく認めません。
ちなみに、持ち主のムズムズピークは今で、スギの花粉が蔓延する3月頃にはムズムズがなくなるため、スギアレルギーではないと言い張っています。

迷子


地図を見ながら思っていたんです。
五反田から自分の家まで歩けるんではないか?と。
距離は2キロもありません。

それを実行する日がやってきました。

用事で五反田に来たので、歩いて帰ってみることにしたのです。ちょっとわくわくします。
道を確認すると、まっすぐ行けば持ち主の知っている道に出るはずです。

それなのに、やってしまったんです。
もしかしたら、こっちに曲がった方が近いかも。と、
地図を見ながらふと思ったんです。

ちょっと右に曲がったらもう、自分の居場所がわからなくなりました。
街灯はあるし、人もたくさん歩いているし、Googleマップも動いてますが、どこにいるのかがわかりません。迷子です。

焦りながらGoogleマップに、近くにあるはずの知っているスーパーの名前を入れて、そこを目指します。
しかし、近くに来ているはずなのにスーパーを見つけられません。

ようやくスーパーにたどり着きいてほっとする持ち主。
ちょっと買い物をして帰途につきました。

でもこのスーパー、かつて一度来ただけで、その時は地図を片手だったのです。安心して地図を閉じていた持ち主は、またしても迷子です。

ここ、どこ?

近いはずなんです。家に。たぶん200メートルも離れてないんです。

地図アプリを立ち上げて、ようやく家にたどり着きましたが本当に怖かったです。
道がうねっている土地は、ついつい方向感覚をなくすから恐ろしいです。

本命


昨日は全国的にバレンタインデーでした。
ぼくの持ち主も会社の同僚たちと一緒に、ボスたちにチョコを渡しました。

去年異動してきた大ボスは、いつもは本社にいるので、あまりふれあいがありません。
会議でやってきた大ボスに、持ち主たちは恐る恐るチョコを持って近づきます。
そして、声をかけてチョコレートを渡しました。

すると、大柄な大ボスは立ち上がり、ああ、ありがとう。と恥ずかしそうにお礼をいい、それからニコニコいいました。

これ、本命?

そうですよ!もちろんみんなの本命です!

持ち主たちも笑って答えました。
意外とお茶目な大ボスに、持ち主は少しだけ親近感を感じたのでした。